2024年1月26日金曜日

いろんな人に支えられての炭焼き20年


 「くどさし」を終え、2月3日の「窯出し」を待つ炭窯。思えば、我々、森林ボランティア、「ひとくら森のクラブ」が、炭焼き体験塾を引き継いでから12年が経ち、ようやく満足のいく菊炭が焼けるようになった。
  
 一庫公園の開園は、平成14年(2002年)4月。一庫ダムの建設で水没し、移住を余儀なくされた国崎地区の人々が、古くから守り育ててきたクヌギの薪炭林を主とする里山を、兵庫県が買い上げ、県立公園として開園した。
  
 昔からこの地区で焼かれた炭こそが、全国的に有名な菊炭、「池田炭(一庫炭)」であった。公園では、この地区の伝統文化であった「炭焼き」を知ってもらうことを目的に、黒川地区で炭を焼かれていた故「今西勝」氏の指導により、開園の翌年、平成15年(2003年)に炭窯がつくられた。


 炭窯の横にある立て看板には、その製作工程とともに、「今西勝さん他の協力を得て作られた」と記されている。
  
 その平成15年より、先輩たちが、かっては、炭材を得るために植林されたが、ダム建設に伴い放置されていたクヌギ林を保全し、計画的に伐採し、窯木を生産し、この炭窯を使って、炭を焼き始めたのである。すなわち、今年度は、炭窯完成20周年、炭焼き開始20周年であったのである。その際、クヌギの伐採、炭窯を使っての炭焼きの許可を県から貰うのに、大変なご苦労があったと聞く。


 話は変わるが、ここ6、7年、我々の炭焼きの出来ばえをを毎年見学に来てくれる方がいる。92歳のご高齢。伊丹より電車とバスを乗り継ぎ、最後はなんと徒歩で30分ほどかけて来園される。昨年はお顔を拝見しなかったので、お加減でも ・・・と案じたが、今年もお顔を拝見し、ホッとした。

  
 Nさん。今西さんと一緒に炭窯の建設に携わり、先輩たちに炭窯の建造から炭の焼き方までご指導を頂いた方だという。私が、ボランティアを始めたのが、平成22年(2010年)。「森のクラブ」を立ち上げ、炭焼きを引き継いだのが、平成24年(2012年)。だから直接の指導を受けたことも顔見知りでもなかったが、Nさん達がいなかったら、現在の炭焼きはあり得なかったかも知れないのである。

 Nさんから手紙を頂いたことがある。そこには、「炭焼きの師匠の方から、日本一の菊炭焼き師になれと励まされてきたが、その願いを森のクラブが達成してくれた」とお褒めの言葉があった。もちろん、過分にすぎるほどで、炭焼きはまだまだ奥が深いと思っている。Nさんからの直接の指導は受けなかったが、引き継いでから、試行錯誤を重ね、どうにかここまでたどり着けたことを見届けていただき、素直にうれしかった。


令和5年(2023年)度の炭焼きも終えようとしている。炭焼きを生業にしていたが、ダム建設によって水没した国崎地区の人々。公園として買い取り、炭窯を作り、炭焼きを許可した兵庫県。補助金で財政的支援を頂いている北摂里山博物館協議会。窯づくりから焼き方までご指導を頂いた今西さんやNさん。日頃協力を頂いている管理事務所。炭焼きの技術の伝承を目指した諸先輩。そして平成24年(2012年)に「森のクラブ」を立ち上げて現在に至る仲間たち。今年も伐採などに多大な協力を頂いた応援団の方々。数えきれないほどのいろんな方に支えられての一庫公園における20年の炭焼きの歴史であった。 

  
 「炭焼き」が人と人とを繋げ、地域の伝統文化を、過去から未来へと繋げていくんだと、改めて実感。これからも、より美しい菊炭を焼けるように精進 ・・・。


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森林ボランティアや炭焼きを楽しみたい方ならどなたでも結構です。
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作業体験、体験入会も受け付けています。


公園管理事務所(072-794-4970)まで
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2024年1月24日水曜日

くどさしを一日早く実施し、今年の炭焼きをほぼ終える

 

  

 第2回目の炭焼き体験塾、窯の温度が順調に上昇したので、「くどさし」を一日早く実施し、今年の炭焼きをほぼ終えました。兵庫県北部に大雪警報が出ていたこともあって、幸いなことに、それにかからずに済みました。初日はプレゼンの後、窯木入れ。589本入りました。

  
 2日目はただひたすら窯の温度を上げるために、薪を焚く作業がメイン。その間に、参加者には、薪割体験やら飾り炭づくりやら、いろいろなことを体験してもらいます。焚口から窯木が、自己熱分解する十分な温度に達したという、通称、「蛇の舌」というサインと、窯の温度を確認してから、焚口を閉鎖します。一般の参加者はこの2日間と10日ほど後の「窯出し」の3日間の参加です。

  
 3日目は温度測定をしながら、窯木の炭化を見守る「蒸らし」という工程です。比較的暇なので、第1回目の標本木の測定や観察をしたり、薪の積み替えなどをします。通常は5日目なのですが、今回は4日目に、煙が浅葱色になり、窯内温度が700℃、排煙口温度も376℃となったので、予定より1日早く「くどさし」を実施しました。さて出来栄えは? 2月3日の「窯出し」が待ち遠しい。
 

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2024年1月22日月曜日

やはり暖かい所が好きなようだ

 



  

 炭焼き中いろんな生き物に出会います。薪割りで出くわすのが、あの美味しい「昆虫食」にもなる「カミキリムシ(天牛)」の幼虫。ぬくぬくと木の布団にくるまれていたのに ・・・。そして、今年は本当に多かった「カメムシ」。暖かいところが好きなようで、炭窯の近くの隙間や、薪の間などに潜んでいる。私は試したことはありませんが、この「カメムシ」も「昆虫食」になるという。さすがにこれは ・・・。


  
 薪をどけるとヨタヨタと出てきたのが、「ヤモリ(家守)」。「ヤモリ」は冬眠はしないが、自分で体温を調整することができない変温動物なので、冬場になって気温が下がると、体温も下がってしまい動きが鈍くなるという。冬眠ではなく休眠を邪魔してしまったようだ。産卵は春から夏にかけてらしいので、この時期、森の中の排水管を覗くと、その中に卵の殻を見ることができる。
  



 珍しいのは、泥で巣を作る「ハチ(蜂)」。「ドロバチ(泥蜂)」、「エントツドロバチ(煙突泥蜂)」。本州から九州にまで生息している「ドロバチ(泥蜂)」の仲間だそうだ。。もう放棄されているのだろうが、竹の両端や軒下などに巣を作っている。泥で巣を固め、雨風や天敵の侵入を防ぐためだろうが、その名前の由来にもなっている、煙突や水道の蛇口のような出入り口を作る。その巣作りの技には感心してしまう。
  
 炭焼き。「蒸らし」という比較的暇な作業の間には、こんな生き物などの出会いを楽しんでいる。

 

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2024年1月21日日曜日

さあ、召し上がれ


  
 おいしそうなお菓子?。塩をまぶし、香ばしくて、カリっとしています。コーヒーにも合います。さてこれは何でしょうか?



 
 答えは「カミキリムシ」の幼虫。炭焼きと並行して、2年後に必要な薪を割ります。この時出てくるのが、「カミキリムシ」の幼虫。クヌギの中で冬を越します。鉄板の上で炒れば、もう立派なおやつ。好奇心から食べてみようという人も、生理的に受け付けないという人も ・・・。
  
 私は大丈夫です。私の出身は、山国、信州・松本。戦後間もない子供の頃は、主な蛋白源は、「イナゴ(蝗)」、「ハチノコ(蜂の子)」、「カイコのサナギ(蚕の蛹)」、「ザザムシ」など「昆虫食」であったことを思い出す。
  


 昼食はあっつあっつの豚汁とご飯 ・・・・。


 

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2024年1月20日土曜日

待望の窯出しの日








 朝から小雨交じりですが、待望の第1回炭焼き体験塾、「窯出し」の日です。「くどさし」により焚き口を密閉した砂を取り除くのを固唾をのんで見守ります。見えました。灰に覆われた菊炭が ・・・。いい具合に焼けているようです。壊れやすいので一本一本手で運んで並べます。660本の窯木を入れましたが、529本が菊炭となって出てきました。80%の出来です。
  
 早速、参加者は米袋いっぱいに焼き上がったばかりの菊炭を詰めたり、切断機で切断したり ・・・。感想を聞くと口々に「念願の炭焼きができた」、「感動した」など、多くのお褒めの言葉を頂いた。それだけで我々は満足です。
   


  
 我々はあったかいお雑煮を頂いてから、昼食もそこそこにして、すぐ第2回炭焼き体験塾の「窯入れ」に取り掛かります。まだ計測をした結果がまとまっていないので、断言はできないが、今回目指していた「菊炭の美しさと炭としての品質の両立」は達成できたようだ。
   


  

2024年1月18日木曜日

小雨の中、第2回目の炭焼きの準備を抜かりなく

 





  
 小雨の中を第2回炭焼きの準備です。「標準木」の形状、重さ、含水率などの計測、折れた両頭ハンマーの柄の取り換え、粘土の採集と篩がけ、木酢液の廃棄などいろいろな仕事があります。


 「くどさし」を終えた炭窯は、すっかり冷え、20日の「窯出し(炭出し)」を静かに待っています。



                       【 2023年度炭焼き募集 】

2回目は、まだ募集定員に余裕があるますので、ぜひご参加ください


                                                      


   

   

2024年1月12日金曜日

フィールド・パビリオン・ツアーのためダッチ・オーブンでベビー菊炭を焼いてみた

 

  
 ダッチ・オーブンで「菊炭」を焼いてみた。事の発端は、2025年に開催が予定されれている「EXPO 2025 大阪・関西万博」である。兵庫県では、地域の方々が主体となって発信し、多くの人に来て、見て、学び、体験していただく取組として、地域の「活動の現場そのもの(フィールド)」を、「ひょうごフィールドパビリオン」として体験してもらうことを計画している。その「SDGs体験型地域プログラム」の一つとして、我々が地域の文化として伝承を続けている「菊炭」を発信できないかというのが始まりである。

 今現在も「菊炭」焼いている途中であるが、窯木を準備するのに2カ月、実際に窯木を入れて、菊炭が焼き上がるのに2週間という日数が必要であり、とても1日で速成体験するのは無理である。そこで思い出したのが、ダッチ・オーブンで炭が焼けるという話。それならば、条件さえ整えば、「菊炭」も短時間で焼けるのではと考えた。「案ずるより産むが易し」である。この炭焼きの期間を使ってトライしてみた。
   





  
 とりあえずやってみようということで、ダッチ・オーブンの中に、当てずっぽうではあるが、直径3.5㎝、4.5㎝、長さ10㎝、5㎝、3㎝に切った「クヌギ(橡、櫟)」の枝を15個ほど入れ、周辺を「もみ殻」で埋めて、火にかけてみた。2時間ほど経つと蓋の合わせ目から、煙(可燃性ガス)が発生し、やがてその煙に燃えだした。全く本番の炭焼きと同じ現象、プロセスである。4時間で、熱分解する成分が無くなり、煙も出なくなった。すなわち炭化が完了したのである。蓋を開けてみると、びっくりするほどきれいな「ベビー菊炭」が焼けていた。やってみるもんですね。
  
 一応、簡単ではあるが、短時間で、炭焼きの原理、工程が体験できるのである。これで「一庫公園で菊炭を焼く」という「フィールドパビリオン」のプログラムに目途がついた。



                       【 2023年度炭焼き募集 】

2回目は、まだ募集定員に余裕があるようですので、ぜひご参加ください