2014年7月30日水曜日

無残にも ・・・


 木漏れ日の林の中で一際目立つ異様な木。樹皮が剥げ、露出した木肌が真っ黒になっている。この山に住む野生の鹿の仕業である。被害木は、自生している柿の木。樹皮が剥がされたあと、自分を守るため、柿が樹液(タンニン?)を出し、こんな色になったのである。柿の栽培農家では、樹皮の下は害虫の住家になるので、病害虫予防のために、敢えて樹皮を剥ぐというが、それとは全く違う。この鹿による樹皮食害、この山の柿の木だけならば、どうってことはないように思えるが、実は柿の実は冬には野鳥の大好物となっているのだ。被害は、「菊炭」の原木となるクヌギの再生林にまでも及んでいる。そして、スギ(杉)、ヒノキ(檜)など近隣の林業の現場でも深刻な問題となっている。若芽や若枝を食べられてしまった台場クヌギは成長しないし、幹の全周を剥皮されたスギ、ヒノキはやがて枯死してしまう。また、一部を剥かれただけでも菌が侵入、材質が低下し商品価値が全くなくなってしまうという。
 

 この近辺の多くの里山林では、鹿が背伸びして樹木の約1.5m以下の枝葉を全て食べ尽くしてしまうため、 枝の下の線が揃い、林の奥まで見通すことができる。これを「ディア・ライン/deer line (鹿摂食線)」と呼び、「奈良公園」などで最も顕著に見られる。(写真は奈良公園、NETより拝借)

 適応力の強い種だけが生き残っていく、それが自然の摂理には違いないのだが、一方で「生物の多様化が必要」ということが言われてから久しい。しかし、森に関して言えば、この鹿の食害問題を解決しないことには、多様化した植生を持つ森林など再生できないことも事実。
  
  

2014年7月9日水曜日

子供達とヤマモモを採る



 子供達と「ヤマモモ(山桃)」を採取した。同じ公園で活動している別の団体が予定しているジャムやジュース作りの「食育」のイベントのためのお手伝いである。この週末にでもと予定をしていたが、台風8号の接近のため、早めに採取しておこうと、8分程度の熟し方で、「ちょっと早いかな」とも思ったが、台風が来れば皆落ちてしまうので、早めの採取をした。この公園には多くの「ヤマモモ」があるが、大粒で、甘味の強い木は数本に限られていて、完熟すると、そのことをちゃんと知っている多くの野鳥や虫が集まってくる。

 ビニールシートを敷き、枝を揺すると、バラバラとまるで雨霰(あられ)のように落ちてくる。私の子供の頃は、おやつは自分たちで採取したものだが、自分たちで実などを採取したことがない子供たちは、「キャア!キャア!」と言って喜ぶ。短時間の間にたくさん取れた。あとは野鳥や虫のために残しておこう。

 何回か「ヤマモモ・ジュース」を作ったことがあるが、結構たいへんな作業だし、砂糖も多く使う。 今回は食後のデザートにあの甘酸っぱい味をつまんで楽しもうと、少し家に持って帰った。
  
  

2014年7月7日月曜日

野生の痕跡


 先日の山作業で見かけた光景。写真ではちょっとわかりにくいが、猪が枯葉の堆積した地面を掘り返して、虫や虫の幼虫、ミミズなどを探した痕である。基本的に猪は、森に生えている植物の地下茎・果実・タケノコなどを食べるという草食に非常に偏った雑食性であるが、季節の変化に応じて、昆虫類、ミミズ、サワガニ、ヘビなども食べるという。そんな餌漁りの痕の写真である。また、遊びの山には、猪が、ダニ等の外部寄生虫を落としたりするための、泥浴を行う「沼田場(ヌタバ)」と呼ばれる場所もある。猪が横になり、転がりながら全身に泥を塗る様子から、「苦しみあがく」という意味の「ぬたうちまわる(のたうちまわる)」という言葉が生まれたといわれてる。

 この地域は、上方落語の「池田の猪買い」などにあるように、猪が昔から有名である。鹿と並んで食害も結構多いため、山沿いの田畑では電柵などが必ず設置されている。地域の肉屋には冬の季節になると、「牡丹鍋」用の猪肉、「牡丹肉」が、ごく普通に販売されている。そして我が住宅地ではないが、神戸の方では、「餌付け」などによって人間の食物の味を覚えてしまった猪が、住宅地付近にまで出没し、民家の庭や路上のゴミを荒らしたり、住民などに噛み付くなどの人的被害も頻繁に報じられている。元来は非常に神経質で、警戒心の強い動物である。そのため、我が遊びの山では、餌探しや泥浴の痕跡はよく見かけるが、鹿などのように遭遇したことはまだ一度もない。棲み分けをするためには、やはり「餌付け」が良くないことがよくわかるのだ。