2015年5月30日土曜日

こちらは空中戦 ~ 続・野生といたちごっこ ~


 幹の髄が中空になっていることからその和名がついた、「ウツギ(空木)」。初夏の山で、雅びで粋な和風の響き。


 ちょっと前に、せっかくの森の手入れの効果を台無しにする最大の天敵は鹿や猪で、この地域の里山景観の象徴である台場クヌギの林を守り、炭焼きを続けていくには、共存していく以上、彼らとの知恵比べ、根比べ、いたちごっこであると書いた。もうひとつの天敵は、「カシノナガキクイムシ」。鹿、猪が地上戦なら、こちらは空中戦である。

 「カシノナガキクイムシ」は、体長5㎜ほどの昆虫であるが、「ナラ菌」というカビの仲間の病原菌を媒介し、ナラ類、シイ、カシ類の樹木を枯らす「ナラ枯れ」をもたらすため、全国に被害が拡大していて、深刻な問題になっている。「カシノナガキクイムシ」は、病原菌を体内に入れて運び、夏から秋に樹木に無数の穴をあけ、卵を産み付け、翌年の6月ころにその幼虫が羽化し、また新しい樹木に卵を産み付け ・・・といったことを繰り返すのである。ナラ菌は孔道を伝わって蔓延するため、木に十分な水分が上がらなくなり、真夏から晩夏にかけ急速に葉が萎れ、茶色や赤茶色に枯れてしまう、「ナラ枯れ」を起こす。1本の木から数万頭が羽化するともいわれ、一度罹ると、その森には爆発的に被害が拡がるという。


 我が遊びの山では、ほとんどが「コナラ/小楢」であったが、一昨年初めて被害木が見つけた。対策といっても、山に無数にあるナラ類、シイ、カシ類のすべてに予防策を施すのは現実的でないし、近隣の私有林などは、その認識もないし対策もできない。そこで、他の樹木への蔓延を防ぐため、枯死した木は伐採し、生きている木は幼虫が羽化し、飛び出す前のこの時期に被害木を粘着シートで覆い、絡め取ろうという対策を施している。少し長い時間を必要とする対策ではあるが、毎年続ける事によって、わが遊びの山発による蔓延を確実に減少させることができる。今日は、昨年新たに発見された被害木、約20本にこのシートを巻くという対策を施した。
  
  

2015年5月16日土曜日

野生といたちごっこ


 新芽が大好物の鹿。はやく鹿除けネットを張らねばと、今日もクヌギ再生林の林床整備に精を出す。今日の作業予定をほぼ終えて、ふと上を見ると一頭の鹿が新芽を食っているではないか(写真右斜め上)。可愛い顔をして、こちらを見ても逃げようともしない。最大の天敵、堂々としたもんである。これからも「鹿」との「いたちごっこ」ならぬ「鹿ごっこ」が続く。


 そしてこちらは「猪」に荒らされた痕。「カシノナガキクイムシ(略;カシナガ)」によってもたらされた菌により枯死(ナラ枯れ)した「コナラ(小楢)」を伐採し、木の中に侵入したカシナガの幼虫が羽化しても飛び立たない7ないように、ビニール・シートで覆う処理をしている。しかし、這い出してきた虫を狙って、猪がシートを食い破るのである。見つけたら補修をしているが、こちらは「猪ごっこ」。

 まあ、自然や動物が相手。もちろん彼らに悪気があってでの話ではないのである。彼らと共生していくには、気長な根比べが必要であろう。とはいえ、農業、林業を生業にしている人にはそんな余裕がないところまできているのも事実だが ・・・。
  
  

2015年5月9日土曜日

新芽、若葉、膨らむ蕾 そして初夏へ


 明るい緑で眩しい遊びの山、延び延びになっていたクヌギ再生林の林床整備を再開した。昨年11月に炭焼きの窯木として伐採した「台場クヌギ」の株から新芽が伸びてきている。10年後には、炭材としてちょうどいい太さに育つ。しかし、最大の天敵は鹿。新芽が大好物の鹿が食い荒らしてしまうので、早く鹿除けのネットをいそいで張らなくてはならない。種の多様性保護、希少種保護の重要性が叫ばれているが、こと森林に関して言えば、それはイコール鹿対策にほかならない。野生動物との共生ははやり難しい課題である。


 「ヤマボウシ(山法師、山帽子)」。その花の形がそれとわかるように、はっきりしてきた。まるで、ミニチュアのようだ。実際は花弁のように見えるのは、白い総包片で、本当の花は中心に淡黄色で球状に集合している。「エゴノキ」と前後して、この花が見られる日も近そうだ。そして、花が散る頃には、梅雨となる。


 この山に多く自生している「ホオノキ(朴の木)」である。この山で、一番大きな葉を持つ木。別名「ホオガシワ」。その蕾が大きく膨らんで、遠目にもそれとわかる。枝の先端の高いところ、大きな葉の真ん中に乳白色の大きな杯形の花をつける。よく目立ち、先端にぽつんと咲く姿は、孤高ともいえるすがすがしさを感じる。

 山はもう初夏の兆し ・・・・。
   
   

2015年5月7日木曜日

まさかのイヌザクラ!



 昨年から周辺の整備をしていた「ウワミズザクラ(上溝桜)」の大木。やっと花が咲き始めたと思ったら、まさかの「イヌザクラ(犬桜)」だった。一同がっかり。「ウワミズザクラ」は花序枝の先に花がつくので、そうではない「イヌザクラ」とは区別できる。遊びの山のほかの「ウワミズザクラ」に比べ、ずいぶんと開花が遅いと思っていた。開いた花は、写真のように極めてしょぼい。写真のように、普通の人だったら、遠目にも花が咲いていることになかなか気づかないだろう。まさに、「どうでもいい桜」、「つまらない桜」の意味で付けられた「犬桜」である。しかし、ほとんど見向きもされないこの桜にスポットをあてただけでもよしとせねばなるまいと気を取り直す。

 さて、話は変わるが、森林ボランティア・クラブを立ち上げてから、早いもので丸3年が経った。週一回の定例の活動、14人の仲間がいるが、いつも11人以上が参加する。もちろん何も強制はしていないし、参加、不参加は全くの自由である。そんな高い参加率で、なぜ丸3年も長続きしているのだろうか。このブログでも書いたことがあるが、山の手入れは典型的な人手による3K(汚い、危険、きつい)作業である。しかし、楽しいのである。ボランティアは、なによりも自分が楽しいと思えることが一番のモチベーションである。自然の中で汗を流し、四季を肌で実感し、季節の移ろいの中でゆっくりではあるが、手をかけたことによる効果が目に見えて感じられる。そして、仲間と一つになっての共同の作業が、誰かの役に立っていると思える充実感。ボランティア、その心は「ワン・フォー・オール」でもある。

 今日もまた満開の「モチツツジ(黐躑躅)」が出迎えてくれる中、仲間と森の手入れに向かう。