2018年1月30日火曜日

知的ゲームのように薪を積む



 炭焼きの蒸らしの工程の間は、1時間ごとの温度計測以外の作業はないので基本的に暇である。そんな時間に来年以降の炭焼きに向けての準備作業を行う。その一つが「薪割り」と「薪積み」である。窯の温度を上げるため、どれだけ強い火力を得られるかが、炭焼きの出来を左右する大きな要因の一つである。そのため、我々は炭材としては適さない太い「クヌギ(椚、櫟)」を割り、最低でも2年間乾燥させたあと、薪として使うことにしている。1回の炭焼きに60本程度の薪を必要とするため、120本の薪を用意する必要がある。ふたりで交代で割り、2年後の準備は一応出来た。

 この玄翁(げんのう)と楔(くさび)をつかっての薪割りも結構大変な作業である。できるだけ力を効率的に木に伝え、目に従って割っていく。すぱっと割れた時は結構快感が得られる。そしてその薪を乾燥させるため「井桁(いげた)」に組んで、1.5mほどに積み上げていく。こちらは「知的ゲーム」。崩れないよう安定して積み上げていくには、組み合わせ方にちょっとしたコツが必要である。だから、一人で考えながら積み上げてゆく。こちらも、美しい井桁ができた時にも、やはり快感がある。
  


  

2018年1月29日月曜日

今夜は乾杯だ!



 雪のため一日遅れたが、今日が第一回炭焼きの「窯出し(炭出し)」の日。何回やっても、出来栄えが気になり、ワクワク、ドキドキする。窯を開けて入る。まだ窯は余韻が残って暖かい。灰をかき分けながら、手に取ってみる。かなりいい出来栄え。ホッと安堵する。写真は窯から出した直後の炭の断面。本当に美しい菊の文様が浮き出ている。窯の上部に入れた、「バイタ」と呼ばれる小枝の束や藁もそのまま炭になっている。データの分析や検証はこれからであるが、テーマを掲げ、試行したことの効果が実証されたと思う。素直にうれしい。今夜は乾杯だ!
  


  

2018年1月25日木曜日

雪の中、二回目の炭焼き準備に取り掛かる


 
 明け方に雪が降り出した。今季一番の冷え込みの朝。うっすらと雪が積もった山の公園へと登る道を車を走らす。スタッドレス・タイヤに替えているので、なんの心配もなく登っていく。

 19日(金)に一回目の「くどさし」をし、この土曜日の午前中に窯を明け、続いて午後、第二回目の炭焼きの「窯入れ」をする予定になっている。その準備作業を行う。降りしきる雪の中、かじかむ手をこすりながらの作業。去年は大雪のため、「窯焚き」を二日延期せざるを得なかったという経験もある。なんとか土・日は積もらないで欲しいと願うのみ。
   
 
 
    

2018年1月21日日曜日

くどさしを終えて



 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、煙突から出る煙の色が美しい浅葱(あさぎ)色になっている。炭化が終わりの段階に差し掛かっている証拠である。

 一回目の炭焼きの最終工程、「くどさし」をやっと終えた。あとは窯が充分冷えるのを待って、「窯出し」、炭を取り出すだけである。まだ炭の出来栄えが確認できていないので、その影響は判断できないが、今回は想定外のことが多く起こった。「じっくりと焼く」という炭焼き方針に従って始めたが、いつも指標にしている煙道の温度が上がらず、今までは2~3日後に「くどさし」を実施できたが、今回は、5日目にずれ込んでしまった。こんなことは初めてである。いずれにせよ、炭を取り出せば、吉凶も、その原因も推定がつく。

 10年ほど前に伐採し、そこから萌芽し、10年かけて成長し、去年の11月に伐採を始めた「台場クヌギ(櫟、椚)」は見事な菊炭になることによって一生を終える。そして、お茶席などで重用され、炭として再び活かされる。この場面が、クヌギにとって最高の晴れ舞台かも。伐採した台場クヌギからはまた新しい萌芽が始まり、10年単位で何回も百年にわたって輪伐を繰り返していく。
   
   

2018年1月20日土曜日

なんとなく春めいた一日だった


 
 
真冬だというのにあったかな小春日和。しごく長閑である。温度計測以外にすることのない炭焼きの日。2頭の母娘鹿に続いて、公園を闊歩しているのは、これも母娘鹿の3頭連れ。天敵ではあるが、こんな日に間近でこんな風景を見ていると、もうすぐ春という気がしてくる。

 そして、石垣の上には、「イノシシ(猪)」の糞。体に似合わず、少量である。なぜかテリトリー内の階段や石垣、岩の上にちょこんとする。雑食。柿の種が混じっているのが見て取れる。

   
   

2018年1月16日火曜日

Joy Joy Joy


 
 炭焼き体験教室二日目である。この日は「窯焚き」、8時間から9時間、ただひたすらに薪を焚く。その火力で、窯内の温度を、窯木が自身で熱分解を起こす500~600℃の温度にまで上げるためである。我々にとっては、この工程がいい菊炭を焼くための、大事なポイントであるが、体験教室の参加者にとっては、極めて退屈な一日である。

 
 そこで飽きないように我々もいろいろなイベントを用意して、参加者に楽しんでもらう。まず里山ツアー。自然観察の森を散策して、里山やそこの住む野生動物、クヌギ林、炭焼、エドヒガン群生林、かっての銀銅鉱脈の露天掘りした跡である「間歩(まぶ)」などのガイドをしながら、炭焼きと原理は同じ、「飾り炭」をつくる材料を集めてもらう。そして、餅を焼いておいしいぜんざいを食べてもらう。炭焼きに欠かすことができない薪割りを、「電動薪割り機」と「玄能(げんのう)」と「楔(くさび)」を使う二つの方法で体験してもらう。

 こんな単純できつい作業も参加者にとっては新鮮で面白いらしく、子供までもが盛んに挑戦、楽しんでもらった。
 
 
 

2018年1月13日土曜日

8年目の炭焼き、今年は気合が入る

 
 怪しげないでたちで炭窯の中にしゃがみこみ、窯木を待っているのは私。体験参加の一般の方8人と一緒に、いよいよ今年の炭焼きが始まったのである。私にとっては8年目、19、20回目の炭焼きである。去年、一昨年あたりから、いい菊炭を焼くちょっとしたコツというか、勘所をつかみかけた感じがしているので、今年の炭焼きは一層気合が入っている。



 朝8時半集合、一日目の作業は「窯入れ」である。準備万端整え、11月から2ヶ月かけて伐採し、クヌギ再生林に集積してあった窯木、約440本を窯の前まで運ぶ。鉈(なた)で突起している枝や節を削いで、手渡しで窯の中に運び込む。いい炭を焼く最初のコツは、できるだけ窯内の空気を少なくするために、いかにぎっしりと窯木やバイタを詰めこめるかである。直径約2m、頂部の高さ1.7mの狭いドーム状の窯内での作業は結構大変である。ヘルメット、防護眼鏡や防塵マスクを着けての作業、最後の頃は、この厳寒時に汗びっしょりとなる。窯木の形状、詰め方、本数などによって毎回違うが、この時点で炭の出来栄えへの影響のかなりの分が決まる。

 最後にギリギリ薪を焚くスペースを残して、トタン板を入れ、「窯焚き」のスペースを作り、「窯入れ」を終える。この最後の詰めともいえるスペースをできるだけ狭くできるかも出来栄えの鍵を握る。そして、古式に則り、火打石と火打金とで火をおこし、1時間ほど予備乾燥をして、一日目の作業を終える。今夜半に降雪の予報もあり、明日の天候を心配しながら、家路に着く。

  


   

2018年1月9日火曜日

もちもちな子供たち




 
 「成人の日」のこの日は恒例の「新年餅つき大会」。一庫公園で活動する6団体が合同で主催をする年1回のイベントである。日頃は活動する日がかぶらないようにしているので、お互いの交流が図れるのも、この日だけである。朝9時半受付開始、小雨が降ったり止んだりのあいにくの天気であったが、一般参加者約60人、スタッフ約30人が集まり、受付開始後、すぐに予定数をオーバーし、受付を締切るほどの大盛況となった。初めて餅をつく親子も多く、子供たちも真剣な顔。お餅がどうやってできるのかを初めて体験し、明日から始まる新学期を前に、少し寒いが美味しい一日となった。メニューは、関西風丸餅のあんこ餅、野菜いっぱいのお雑煮、きなこ餅、おろし餅。お昼近くには、お馴染み公園アイドル、鹿親子も顔を出してのご愛嬌。今年も餅つきから始まるイベントは上々のすべり出し。
   
 
 
   

2018年1月8日月曜日

野生の息吹きを感じて ~ 猪のヌタ場にて ~



 写真は、「猪の沼田場(ヌタ場、ぬたば)」である。炭焼きの工程で、炭窯を密閉するのにレンガを積み上げてしているが、その時に必要な粘土を、いつも決まった公園内の場所で採取している。粘土を採ったその跡の窪地に雨水が溜まり、格好な泥田ができる。そこが、猪にとって絶好の「沼田場」となっているのである。「沼田場」とは、イノシシなどの動物が、体に付いているダニなどの寄生虫や汚れを落とすために、泥を浴びる場所のことで、「のたうち回る」の語源とも言われている。粘土がそれに適しているとちゃんと知っているのである。のたうち回るところは見たことはないが、周辺の木に泥をこすりつけているので、「沼田場」とわかる。野生の息吹きを感じながら、粘土を土嚢に詰め込む。

 
 こちらは、もうすっかり馴染みとなった鹿の親子。正月あけての「顔見世」である。公園管理事務所の職員たちは、愛称をつけているようだが、こうなると野生といえども、アイドル並。まっ、可愛いことは可愛いが ・・・。いやいや、われわれにとっては、やはり天敵。
 
   
 
  
 

2018年1月7日日曜日

霜柱を踏みしめて初山仕事へ



 
 山の初仕事は、日陰にうっすらと雪が積もる中を、霜柱を踏みしめて山頂まで上る。山頂のちいさな岩にお神酒を捧げ、二礼二拍一礼と作法通りに、安全祈願をするのが慣わし。また今年の山作業が始まるのだ。活動フィールドの公園は48ヘクタールと広大。毎年一年間ほぼ同じような作業を繰り返すのだが、その影響や効果などたかがしれているかもしれない。しかし、繰り返して続けることが大事なことだと信じている。途中、「モミ(樅)」の大木を仰ぐ。たしか一昨年、落雷にあって、幹の上部が真っ二つに裂けている。それでもなお、青々とした葉を茂らせ、必死に生きながらえている。仲間の爺さんたち、なんとなく我が身になぞらえ、しばし感嘆と共感の思いで仰ぎ見る。そして、炭焼きの準備をしながらの正月談義、孫談義。「来るのは嬉しいが、帰るのも嬉しい」。そんな意見に皆がうなづく。正月は突然、穏やかな日常に、非日常が割り込んでくるのだから、それが爺婆たちの本音であろうか。