2016年6月24日金曜日

再びの宣戦布告? ~ これからは神経戦に ~


 ワークショップのすぐ目の前で鹿が葉を食べている。いわゆる「鹿の子模様」の夏毛と特徴である白い「尻班(しりはん)」がはっきりわかる。少し小ぶりなところからすると、昨年生まれた子鹿であろうか。一般的に、鹿は母子グループで行動するようだが、この時期は年に1回の出産時期。そのため子鹿が単独行動をとっているのかも。まったく人を怖がる様子もなく園内を闊歩している。ちょうど居合わせた家族連れに教えてあげると、「可愛い!」といってスマホで写真を撮っていた。


 しかし、私たちにとっては、この可愛い鹿も、シビアないたちごっこの攻防を繰り返している天敵である。今日も、つい先週補修したばかりの鹿除けネットの同じ箇所が破られていたので、修理を終えて帰ってきた矢先の遭遇である。数年前まではクヌギの若葉を丸坊主にというようなことはなかったのであるが、鹿は母子グループで狭い範囲で行動し、排他性も弱く群れるので、天敵がなければ、瞬く間に高密度になるという。一頭あたり一日約3kgの食糧が必要というから、異常に高密度なってしまった公園の鹿たちも、背に腹は変えられず、奥から人間のエリアまで出てきたということであろう。


 この時期かれらの一番好きな若葉のあるクヌギ林へと続く「けものみち」を遮断するようにネットを張っているから、シビアな戦いになるのは覚悟の上である。駆除できない以上、もう単純にネットを張るだけの攻防ではなく、鹿の嫌がることを徹底的にするという神経戦の段階に突入した。しかしこれまでは連敗。勝機は見いだせるのだろうか。
   

2016年6月9日木曜日

ナラ枯れはピークを越えたか



  今年もまた「ナラ枯れ」対策を始める。「ナラ枯れ」とは、「ナラ菌」というカビの仲間の病原菌と、その病原菌を媒介する「カシノナガキクイムシ」という体長5㎜ほどの昆虫によって、ナラ類、シイ、カシ類の樹木を枯らす「樹木の伝染病」である。「カシノナガキクイムシ」は、病原菌を体内に入れて運び、夏から秋に樹木に無数の穴をあけ、卵を産み付け、翌年の6月にその幼虫が羽化し、また新しい樹木に卵を産み付け ・・・といったことを繰り返すのである。ナラ菌は孔道を伝わって蔓延するため、水分が上がらなくなり、真夏から晩夏にかけ急速に葉が萎れ、茶色や赤茶色に枯れてしまう。1本の木から数万頭が羽化するといわれ、一度罹ると、その森には爆発的に被害が拡がるという。我々は、幼虫が羽化し、被害木から飛び出すまえに、捕獲するため、「アース製薬/かしながホイホイ」という、粘着シートを被害木に巻くという対策を取っている。


ここ3年ほど実施した結果、枯死にまで至る「コナラ(小楢)」、「クヌギ(椚、櫟)」、「アベマキ(棈)」は、被害木全体の1割にも満たなく、ほとんどないといって良かった。結構耐えてくれるものである。「カシノナガキクイムシ」の群れも、六甲山方面へ移動したという情報もあり、この秋の被害木の状況を見ないと断言はできないが、ピークを越えたようであり、そう神経を尖らせなくても良さそうである。

とはいえ、特に目立つ尾根筋の観察路の周辺の被害木に、粘着性のシートを巻くという今までどおりの対策を施すことにして、被害木の詳細な調査は割愛することにした。ちょうど地元での仕事体験教育の「トライやるウィーク」で来ている中学生にも手伝ってもらい、先週今週併せて30本近い被害木に対策をした。

満開の「ヤマボウシ(山帽子、山法師)」ももう終わりである。


 樹木が枯れて、新しい芽が出て、大きな木に育っていく。その永遠の繰り返しで、形作られた森が続いていく。そのバランスがうまく取れ、サイクルが回るように手を添えてあげるのが、森林ボランティアの働きだと思っている。植物が枯れることを、人と同じように英語で「die」というが、この山で、芽を出し、育っては枯れる。それを繰り返していった気の遠くなるような時間を思う。