2016年6月9日木曜日

ナラ枯れはピークを越えたか



  今年もまた「ナラ枯れ」対策を始める。「ナラ枯れ」とは、「ナラ菌」というカビの仲間の病原菌と、その病原菌を媒介する「カシノナガキクイムシ」という体長5㎜ほどの昆虫によって、ナラ類、シイ、カシ類の樹木を枯らす「樹木の伝染病」である。「カシノナガキクイムシ」は、病原菌を体内に入れて運び、夏から秋に樹木に無数の穴をあけ、卵を産み付け、翌年の6月にその幼虫が羽化し、また新しい樹木に卵を産み付け ・・・といったことを繰り返すのである。ナラ菌は孔道を伝わって蔓延するため、水分が上がらなくなり、真夏から晩夏にかけ急速に葉が萎れ、茶色や赤茶色に枯れてしまう。1本の木から数万頭が羽化するといわれ、一度罹ると、その森には爆発的に被害が拡がるという。我々は、幼虫が羽化し、被害木から飛び出すまえに、捕獲するため、「アース製薬/かしながホイホイ」という、粘着シートを被害木に巻くという対策を取っている。


ここ3年ほど実施した結果、枯死にまで至る「コナラ(小楢)」、「クヌギ(椚、櫟)」、「アベマキ(棈)」は、被害木全体の1割にも満たなく、ほとんどないといって良かった。結構耐えてくれるものである。「カシノナガキクイムシ」の群れも、六甲山方面へ移動したという情報もあり、この秋の被害木の状況を見ないと断言はできないが、ピークを越えたようであり、そう神経を尖らせなくても良さそうである。

とはいえ、特に目立つ尾根筋の観察路の周辺の被害木に、粘着性のシートを巻くという今までどおりの対策を施すことにして、被害木の詳細な調査は割愛することにした。ちょうど地元での仕事体験教育の「トライやるウィーク」で来ている中学生にも手伝ってもらい、先週今週併せて30本近い被害木に対策をした。

満開の「ヤマボウシ(山帽子、山法師)」ももう終わりである。


 樹木が枯れて、新しい芽が出て、大きな木に育っていく。その永遠の繰り返しで、形作られた森が続いていく。そのバランスがうまく取れ、サイクルが回るように手を添えてあげるのが、森林ボランティアの働きだと思っている。植物が枯れることを、人と同じように英語で「die」というが、この山で、芽を出し、育っては枯れる。それを繰り返していった気の遠くなるような時間を思う。
   

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