2021年11月27日土曜日

炭焼き入門講座(10) 窯出し、出来栄えに心が躍る日 

 

  

 ずらりと並んだ窯から取り出したばかりの「菊炭」。いよいよ最後の工程、「窯出し」である。

 
 窯の内部の温度が十分冷えるまで待って、「窯出し」を行なう。焚口を覆っていた砂を取り除き、遮蔽板、トタン板を取り除くと、待ちに待った炭が姿を現す。あれだけぎっしりと窯いっぱいに詰めた窯木が、ここまで縮小して炭になっているのが、よくわかる。窯の中はまだ暖かいし、手に持った炭もまだ暖かい。この瞬間がまちのぞんだ「窯だし」の瞬間。
  



  

 崩れやすいので、窯から取り出した炭は、一本一本慎重に手渡ししながら、並べていく。崩れずに焼きあがった炭の本数をカウントし、入れた窯木の本数と比較して「良炭率」を計算する。バイタの小枝や麻ひも、詰め込んだ藁もきれいに炭になっている。


  
 標準木は、重さ、寸法等を計測したあと、切断し、出来栄えの評価をする。焼きあがった炭は、炭焼き参加者に木酢液とともに、記念のお土産としてお渡しをしている。

 終わった後、窯の掃除・点検、使った道具や計測器の点検・手入れ、炭の片付けをすれば、炭焼きは終わりであるが、得られたデータの整理、それも基づく評価や反省、新たに得られた知見によるマニュアルの改訂など、1年後の炭焼きに向けての課題の設定も、大事な仕事である。

 「クヌギ」を伐採した林の林床整備、鹿の食害から若芽を守る切り株への網掛け等、炭焼き後もしなければならない仕事が待っている。

 今回で、炭焼き入門講座を終えますが、この講座は、一庫公園の炭焼き窯で行った炭焼きから得られた知見を述べています。炭窯や材が違ったり、また地域が違えば、別の方法や知見があると思います。すべての炭焼きに当てはまるわけではないことをご承知おきください。実際に体験してみないと、わからないことも多いと思います。12月2日から体験塾の募集が始まります、ぜひ参加ください。お待ちしています。




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森林ボランティアや炭焼きを楽しみたい方ならどなたでも結構です。
自然に親しみながら楽しく活動してみませんか。

11月からは菊炭の材料となるクヌギの伐採が始まります。
お手伝いいただけると大変助かります。

公園管理事務所(072-794-4970)まで
お問い合わせください。  
 










2021年11月26日金曜日

炭焼き入門講座(9) 蒸らし、練らし、くどさし キーワードはじっくりと焼く

  

 「菊炭」である。「菊炭」と呼ばれる所以は、断面が菊の花のような美しい文様になることからであるが、この文様も、樹皮の部分がちゃんと残ってこその美しさである。この樹皮が剥がれず、きれいに残るように焼くことこそ、菊炭焼きの「極意」と言っていい。

 入念な準備をし、ぎっしりと窯入れをしても、ここでしくじると、きれいな菊炭はできない。前にも述べたが、窯木は炭焼きの後では、体積で約1/2、重さで約1/3に縮まってしまう。急激に温度をあげれば、窯木は急激な縮小に耐えられず、炭にはなるが、樹皮は剥がれ落ちてしまう。急いては事を仕損じる。だから、「蒸らし」という窯木が、自分で熱分解を起こし炭化してゆくプロセスでは、「じっくり、ゆっくり」というのがキーワードで、2日間かけてじっくりと焼き上げる。

 最初は水分、そして温度があがって来るにしたがって、セルロース、リグニンなどが分解され、それに伴って煙の色も変わって来る。この色の変化を見極めることも重要。



 1時間ごとの温度チェックで、温度が狙い通りの経過をたどっているか、チェックするのが主な作業なので、比較的暇である。煙は煙突で冷やされて、木酢液となって逆流し、タンクにたまる。夏の暑さによっては、多く水分を吸っているので、タンクに大量に溜まり、200リットルを超えてオーバ-フローする場合もあるので、くみ出しをする。またこの間に2年後の炭焼きのための薪を作って、井桁にくんだり、暇と言ってもいろんな仕事をこなす。
  





 煙道内温度は、炭焼き開始3日目の「蒸らし」では、100℃以下、4日目は200℃以下でゆっくりと上昇させることが望ましい。4日目の「蒸らし」では、5日目の昼間に「くどさし」を行うことを想定し、「くどさし」が夜中や早朝になることを避けるため、特に温度が上がりすぎないように注意して、空気調整口を絞る。
  
 煙道温度が200℃を超えると、煙の色、量など見て総合的に考慮しながら、空気調整口を全開にする。空気を送り込み、一気に不純物等を燃焼させる。これを「練らし」と呼ぶが、しばらく「練らし」を行うと、熱分解する成分がなくなり、煙は薄い「浅葱(あさぎ)色」となる。やがては、煙は出なくなってしまうのだが、その一歩手前で「くどさし」を行う。この「浅葱色」が「くどさし」のサインで、煙道温度は約300℃に達する。
  
 以前は、煙道内にマッチ棒を入れ、その点火時間で「くどさし」をするかどうか判断していたが、現在は、煙道温度と煙の色が主な判断基準で、マッチの点火時間は参考データとしている。
  



 
 「くど」とは、関西では「おくどさん」などと呼ばれるように、「竈(かまど)」のことである。それを「鎖(さ)す」から「くどさし」と呼ばれている。すなわち、完全に窯へ入る空気を遮断することである。空気が入ってくると、せっかく焼けた炭が燃えて灰になってしまう。焚口、天井口、排煙口、すべて砂を被せて空気を遮断する。あとは、窯木の化学反応次第で、窯を再び開ける「窯だし」まで、炭の出来栄えは、「天のみぞ知る」ということになる。
   




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2021年11月25日木曜日

高校生に里山を体験してもらう

 




  
 今日公園にやって来たのは、地元の高校1年生40人。野外体験学習ということで、我々は、里山のことや、炭焼きのこと、鋸などの道具の使い方などを彼らに教え、彼らは、我々の窯木作り、バイタ作りをお手伝いしてくれる授業である。去年から始まって、今年が2回目。
 
 もちろん、炭焼きのことを学んだり、鋸で木を伐るなんて彼らは初めてのこと。意外と新鮮な体験だったらしく、終わったあとの感想は、異口同音に「楽しかった!!」。
  
 「菊炭焼き」という地域の伝統文化や、炭や薪など「木」が中心にあったかっての生活、それを支えていた里山、そんなことを少しでも学んでくれたら、うれしい。皆さんが作ってくれた窯木、バイタは、1月の炭焼きでしっかり使わせてもらいますよ。




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2021年11月24日水曜日

炭焼き入門講座(8) 窯焚き ただひたすらに薪を焚き、蛇の舌を待つ

 


 炭焼き二日目は「窯焚き」。朝8時から約8時間、ただひたすらに薪を燃やし、窯木が熱分解を始める温度、500~600℃まで、窯の温度を上げる。強い火力を得るために、薪は2年以上乾燥したものを燃やすと決めている。一度に多くの薪は入れず、5~6本の薪で炎が最大、それを持続するように、薪の配置や入れるタイミング、燠の始末などに「コツ」があり、この薪を燃やすのにも、それなりの技が必要である。初めは「バイタ」から熱分解が始まり、温度が上がるにつれ、窯木全体が熱分解を始めてゆく。


 熱が窯全体に回り始め、煙の道筋が安定した排煙口からでるようになった段階で、天井を閉め、煙突を接続する。この時温度センサーを天井と煙道口に挿入する。しばらくの間は、天井のセンサーは、薪の炎の温度、煙道口のセンサーは、窯木から出る水蒸気の温度を感知するので、窯の温度としては参考にならない。
  

 
 8時間ほど薪を燃やし続け、天井温度が500℃を超えた午後4時ころになると、窯の温度が十分上がり、窯木が自分で熱分解を始め、外部から熱を加えなくても、反応が進んでいくというサインが現れる。「蛇の舌」と呼んでいるサインである。熱分解によって窯木から発生した可燃性ガスが窯に充満し、焚口に逆流し、薪の炎によって着火し、まるで「蛇の舌」のように伸びてくる。こうなると、もう薪は不要である。焚口を遮断する準備をする。

  

  
 以前はレンガと粘土によって壁を作り、遮断していたが、燃え盛る炎の前での作業、まさしく3K作業の最たる作業である。昨年からは、軽量セメントボード、耐熱石膏ボードの遮蔽板を試作し、3K作業の改善に大きな効果を得られた。
  
  
 密閉しても、窯の温度は十分に上がっているので、熱分解は進行し、さらに窯の温度は上がっていく。反応の進み具合を調整し、「くどさし」のタイミングを図るための空気調整口を残して遮蔽を行い、「窯焚き」は完了する。
 



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2021年11月22日月曜日

炭焼き入門講座(7) 窯入れ いかにぎっしりと詰められるかが腕の見せ所

 

  

 炭焼きの初日、「窯入れ」は安全祈願の神事から始めます。これから2週間の炭焼きを安全に、そしていい炭が焼けるようにと、手を合わせ、頭を垂れます。


 窯入れの作業は、窯木は、太さ毎(特太、太、中細)に、そして割り木、雑木などに仕分けして置かれた場所から、窯内の作業者の要求に応じて、手渡しで窯内に入れていく。

  

 窯木は細い方を下にして、できるだけ垂直になるよう、かつぎっちりと隙間が少なくなるように詰めていく。これは「炭焼きの原理」の項でも述べたように、できるだけ窯内の空気(酸素)の量を少なくするためである。空気の量が多ければ、蒸し焼きではなく、窯木は燃えて灰になってしまう。窯の奥、壁の周囲には細い木、曲がり材を置き、中央には中太の窯木、およびタグをつけた標準木を置く。ドーム部の窯の縁には藁を、バイタは窯木の上部に、可能なかぎり、ぎっちりと詰めていくことが肝要。ここが窯内での作業者の腕の見せ所、炭の出来栄えに反映します。良炭率の算出、窯内での炭化現象推測の手がかりのため、窯入れ時に入れた窯木(特太、太、中、細、割り木、雑木)の数を数え、計数表に記入する。バイタ、藁の数も併せて記入する。

 最後はできるだけ細木、割木を詰め、入り口には、隔離用トタン板の倒れ防止のため太い窯木を置く。わずかな窯焚きのスペースを残して、トタン板で窯内と焚き口とを分離する。これで「窯入れ」は一応終わりです。

 この後は、窯木などを乾燥させ、また、窯に異常がないかなどを確かめるために、30分~1時間ほどの予備燃焼を行います。我々は、この時、古式に則り、自作の火打石と火打金を使って採火をし、焚口へ火をつけます。意外と簡単に採火できます。

 こうして、第一日目の作業、「窯入れ」は終了です。





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