2021年11月26日金曜日

炭焼き入門講座(9) 蒸らし、練らし、くどさし キーワードはじっくりと焼く

  

 「菊炭」である。「菊炭」と呼ばれる所以は、断面が菊の花のような美しい文様になることからであるが、この文様も、樹皮の部分がちゃんと残ってこその美しさである。この樹皮が剥がれず、きれいに残るように焼くことこそ、菊炭焼きの「極意」と言っていい。

 入念な準備をし、ぎっしりと窯入れをしても、ここでしくじると、きれいな菊炭はできない。前にも述べたが、窯木は炭焼きの後では、体積で約1/2、重さで約1/3に縮まってしまう。急激に温度をあげれば、窯木は急激な縮小に耐えられず、炭にはなるが、樹皮は剥がれ落ちてしまう。急いては事を仕損じる。だから、「蒸らし」という窯木が、自分で熱分解を起こし炭化してゆくプロセスでは、「じっくり、ゆっくり」というのがキーワードで、2日間かけてじっくりと焼き上げる。

 最初は水分、そして温度があがって来るにしたがって、セルロース、リグニンなどが分解され、それに伴って煙の色も変わって来る。この色の変化を見極めることも重要。



 1時間ごとの温度チェックで、温度が狙い通りの経過をたどっているか、チェックするのが主な作業なので、比較的暇である。煙は煙突で冷やされて、木酢液となって逆流し、タンクにたまる。夏の暑さによっては、多く水分を吸っているので、タンクに大量に溜まり、200リットルを超えてオーバ-フローする場合もあるので、くみ出しをする。またこの間に2年後の炭焼きのための薪を作って、井桁にくんだり、暇と言ってもいろんな仕事をこなす。
  





 煙道内温度は、炭焼き開始3日目の「蒸らし」では、100℃以下、4日目は200℃以下でゆっくりと上昇させることが望ましい。4日目の「蒸らし」では、5日目の昼間に「くどさし」を行うことを想定し、「くどさし」が夜中や早朝になることを避けるため、特に温度が上がりすぎないように注意して、空気調整口を絞る。
  
 煙道温度が200℃を超えると、煙の色、量など見て総合的に考慮しながら、空気調整口を全開にする。空気を送り込み、一気に不純物等を燃焼させる。これを「練らし」と呼ぶが、しばらく「練らし」を行うと、熱分解する成分がなくなり、煙は薄い「浅葱(あさぎ)色」となる。やがては、煙は出なくなってしまうのだが、その一歩手前で「くどさし」を行う。この「浅葱色」が「くどさし」のサインで、煙道温度は約300℃に達する。
  
 以前は、煙道内にマッチ棒を入れ、その点火時間で「くどさし」をするかどうか判断していたが、現在は、煙道温度と煙の色が主な判断基準で、マッチの点火時間は参考データとしている。
  



 
 「くど」とは、関西では「おくどさん」などと呼ばれるように、「竈(かまど)」のことである。それを「鎖(さ)す」から「くどさし」と呼ばれている。すなわち、完全に窯へ入る空気を遮断することである。空気が入ってくると、せっかく焼けた炭が燃えて灰になってしまう。焚口、天井口、排煙口、すべて砂を被せて空気を遮断する。あとは、窯木の化学反応次第で、窯を再び開ける「窯だし」まで、炭の出来栄えは、「天のみぞ知る」ということになる。
   




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森林ボランティアや炭焼きを楽しみたい方ならどなたでも結構です。
自然に親しみながら楽しく活動してみませんか。

11月からは菊炭の材料となるクヌギの伐採が始まります。
お手伝いいただけると大変助かります。

公園管理事務所(072-794-4970)まで
お問い合わせください。  
 



 

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