2015年11月30日月曜日

喫茶去  ~ 一庫炭物語の完結 ~


 急に寒くなり、山の紅葉も鮮やかに色づき、見頃を迎えた今日は、我がクラブが主催する、「お茶会」。活動拠点の一庫公園」内にある「エドヒガン」桜の群生地が、市の天然記念物に指定されたのがきっかけとなって、公園では「北摂里山キャンペーン」を実施している。お茶会は、紅葉とお茶を楽しんでもらうというその一環のイベントである。





 茶席に掲げた「喫茶去」の軸。私は茶の湯のことはさっぱりであるが、「きっさこ」と読み、中国唐時代の禅僧、「趙州和尚」の言葉だそうで、「まあ、お茶でも一服召し上がれ」という意味であるという。シンプルな、いい言葉である。

クヌギの伐採、窯木作り、自然体験学習のサポートなどの山遊びに加え、病院、帰省などの私事も重なり、この11月は、現役時代と同じくらいめっぽう忙しかった。されど忙中閑あり、まさに「喫茶去」、主催者である私もゆったりとした気分でお点前を楽しむことだできた。

センター内に設えてある囲炉裏を使って茶席に設え、地元中学校の茶道部の生徒さんにお願いしてのお点前。厳密な作法にのっとっているかどうかはわかないが、そこは「一庫流」、楽しんでもらうことが最優先。

 静けさ、湯の沸く音。子供たちも多く参加したが、その静粛な雰囲気を感じてか、履物も揃え、無作法に騒ぐ子は一人もいない。場が躾けるのである。花生けには、公園に今を盛りと咲く一挿しの「サザンカ(山茶花)」。壁には、これも園内で見られる「サネカズラ(実葛)」。その昔、つるから粘液をとって整髪料に使ったことからn別名、「ビナンカズラ(美男葛)」とも呼ばれている。そして、和菓子は地元猪名川町の老舗「うませ」の「冬もみじ」。

 台場クヌギを前の伐採から8年、10年かけて育成し、そしてまた伐採を繰り返して窯木を作り、炭焼きをする。そんなことが日常だった、かっての里山を保ち、菊炭・炭焼きを伝承していくという一連の我々のボランティア活動。もう炭を使う機会がほとんどなくなった今、ここに我々が綴ってきた「一庫(ひとくら)炭物語」が完結した。

2015年11月26日木曜日

ノコギリは少し難しかったかな



 台場クヌギと伐採した炭焼きの窯木を見ている子供達。里山自然体験学習のウォーク・ラリーで学んでいる小学校3年生たちである。春に、秋にと、年間何校もの小学生たちが体験学習に訪れるが、今年はこの子達が最後の組である。近隣の街I市から、なんと178名もの子供たち。今年最多。I市は阪神間にあって、大型のマンションの建設が急速に進んだベッドタウン。どこもかしこも少子化の昨今にあって、この学校だけはびっくりするほど子供が多い。

 今日のメニューは、ウォーク・ラリー、木のコースター作り、ノコギリ体験であったが、一番難しかったのが、のこぎり体験のようである。とにかくノコギリを使った経験のある子は皆無。まず挽く姿勢が悪いのは言うまでもないが、力も握力もない。直径4、5cmほどの枝を伐るのに5分以上もかかる。私の子供時代には、勝手に親父ののこぎりを持ち出し、自分の遊び道具を作っていたのだが ・・・。こんなところにも、体力低下、遊びへの適応力のなさが垣間見られる。178名の鋸体験。時間がなく多分全員はできなかったが、サポートしてあげただけで、爺さんたちはもうぐったり疲れてしまった。

 ウォーク・ラリー、今日の花の名前を探す問題は、「サザンカ(山茶花)」。椿に劣らない美しい大輪の山茶花が、今豪華に咲いている。

  

2015年11月25日水曜日

手入れをすれば森は確実によみがえる



 今年も植生調査を行った。平成24年、続いて25年から森の中に、10m×10mの調査区域、2区域を設定し、その中にどのくらい種があるのかを調べるという、毎年続けている植生調査である。我々は遊びの山を、主に「ヒサカキ(姫榊、非榊)」、「アセビ(馬酔木)」、「ソヨゴ(冬青)」など常緑広葉樹を伐採する、いわゆる「兵庫方式」で、森の手入れを行っている。森を明るくしたら、どのくらいの種が増えてくるのか、どれだけ森の多様性が回復したのか、その効果をデータで実証するための植生調査、追跡調査である。

 さて、その結果であるが、H24年調査区域については、伐採時(調査開始時)は23種出会ったものが、27種(H25)、32種(H26)、38種(H27)と着実に増加し、H25年調査区域に至っては、22種(H25年開始時)⇒35種(H26)⇒47種(H27)と飛躍的に増加している。手入れをすれば森は確実によみがえるのである。

 下段の写真は、萌芽した「コバノガマズミ(小葉莢迷)」 、「クロモジ(黒文字)」のベイビーである。順調に育ってほしいと願うが、最大の問題は鹿の食害である。クヌギの再生林のようにスポット的にはネットなどで対策は打てるが、山全体となるととても不可能である。いまのところ打つ手はないのが実情である。
  
   

2015年11月23日月曜日

今年もクヌギ伐採を始める


 来年1月から始まる炭焼きに向けて、炭材となる「クヌギ(椚、櫟)」の伐採を始めた。なぜこの時期にクヌギを伐採するのか? それは、葉が枯れ、もう水分を上げなくなったこの時期が一番伐採に適しているからである。今回伐採を計画している区域は、平成18年に伐採した区域である。その後萌芽した枝が育ち、7年経つと炭材として使えるくらいの太さに育つ。台場クヌギを伐る位置は、古来より台場の株から「一寸」と言われており、其の位置にチェーンソーを入れて伐採する。伐採した幹は、枝を払い、我々の窯の大きさに合わせた約80cmの長さに玉切り(輪切り)する。これが、「窯木(かまぎ)」とよばれる炭の材料となる。我々の窯で、太さにもよるが、だいたい窯木が1回の炭焼きで400本ぐらい入るのである。今年は2囘の炭焼きを予定しているので、800本近くの窯木を準備しなくてはならない。


 払った枝はさらに細かく切り、50cmほどの長さにして束ね、柴木にする。これは「バイタ」と呼ばれ、窯木の炭焼きの初期の段階で、窯内の温度を上げ、熱の廻りをよくするために窯木の上に詰め込むものである。1回の炭焼きで80~100束ほど必要とする。

この伐採、窯木作りが、炭焼きの工程の中で、もっともキツイ作業である。我々は定年をとうに過ぎた爺さん婆さんのボランティア・グループ、体力的にも相当落ちてきているため、急斜面での伐採作、窯木降ろしは安全第一が最優先、そして長時間の作業はきつくなってきているため、どうしても小刻みで日数を要するようになってきている。去年から炭を焼く窯数も3窯から2窯に減らしたが、それでも伐採に4日間、窯木作り、窯木降ろしに6日間ほどを考えている。森の中で窯木を作る作業はたちまち汗ビッショリであるが、この上なく爽快で達成感もあるからやめられない。
  

  

2015年11月8日日曜日

炭焼きへ始動開始!


 早いもので一年があっという間に経ち、もう今年の炭焼きの準備を始める時期になった。今年度の炭焼きは2回を予定。第1回は平成28年1月16日から、第2回は1月30日からと決まっている。まず最初にすべきことは、菊炭の材料である台場クヌギの再生林を調査し、2回分の炭焼きの材料を確保するための、伐採するエリアを決めることである。この日は、平成18年、平成19年に皆伐したエリアを調査。写真のように切り株の脇から萌芽し、手頃な太さに育っている。1回の炭焼きで窯木は350本程度必要なので、700本の窯木が採れるかどうか見極めるための大事な調査である。さて、得られたデータを基に早急にエリアを決めなくてはならない。

それよりもっと大事なことは、炭窯が今年もまた炭焼きに使えるかどうかを点検しなくてはならない。それは炭焼きを生業としているプロにお願いしている。この山に多くあり、常緑で他の樹木の成長をさまたげているので、いつもは伐採の真っ先の対象木となる雑木、「ヒサカキ(非榊)」の実も宝石のように色づいた。