2021年11月13日土曜日

炭焼き入門講座(5) 科学的アプローチが技術の習得に導いた

 

  

 森林ボランティアクラブを立ち上げ、「炭焼き」を引き継いでから9年、前回は、良炭率97%という今までで最高の出来栄えを記録した。これは、100本入れた窯木のうち、97本が形が崩れず、菊炭となって出てきたということを意味する。まだまだ奥が深く研鑽が必要だが、何とか「菊炭を焼く」技術の習得という目標地点までなんとかたどり着けた。

 思い返せば、炭焼きを始めたは10数年前、その頃、炭焼きに関するノウハウは一人の長老が握っていて、我々はその人の指示で作業をこなすだけであった。引き継いだ時もノウハウは引き継げなかったという苦い記憶もある。だが、逆にそのことが、クラブ員みんなの好奇心、探求心、向上心を刺激し、努力、協力、そして科学的アプローチによるデータの積み重ねと試行錯誤によって最高の結果までたどり着けた。

 そのようないきさつもあり、わが「森のクラブ」では、次のような基本方針、実施事項を掲げ、これまで炭焼きを行ってきた。

 クラブ員みんなの好奇心、探求心、努力、協力、そして科学的アプローチによるデータの積み重ねと試行錯誤による結果である。

 森のクラブでは、次のような基本方針、実施事項を掲げ、これまで炭焼きを行ってきた。

森のクラブの炭焼き基本方針

 1)より美しい菊炭を目指す ⇒ 技術向上のための課題・テーマ設定し、事前にプロセス等の討議と方針周知する
 2)科学的なアプローチで ⇒ いろんなデータ収集・分析、見える化、自由な討議による検討の活発化

 3)全員参加でノウハウ共有 ⇒ 全員がすべての役割を経験する。マニュアル化して、ノウハウを積極活用
  
 特に2)の科学的アプローチは、炭焼きにかかわるいろいろな条件や結果を、可能な限り
データ化し、それをもとに「今、窯の中で何が起こっているのか」をみんなで推理し、討議
し、結果を評価するというプロセスを積み重ねています。なにせ年2回しか実証できないので
ある。
  
 どんな科学的アプローチをしているのか、主なものを具体的に述べましょう。
  
1)デジタル温度計による窯内温度の24時間計測



 何より重要なのは、「くどさし」まで、窯の温度をどう上げていくかです。天井口と
排煙口に温度センサーを入れ、窯内の温度変化を測定し、炭の出来栄えとの相関を見てい
ます。残念ながら、プリンタが生産中止で手に入らないので、データの自動プリントまでは
行きませんが、窯焚き後、窯口を遮蔽してからの温度変化を、夜間の無人の場合も含め、24
時間自動測定できるようになりました。その結果、ほぼ理想の温度上昇の曲線を見つけ出す
ことができました。
 
2)標本木10本の選定と炭焼き前後での寸法、体積、重さの計測
  

 直径が10㎝ほどで、あまり曲がりのない窯木10本(標本木と呼ぶ)を選んで、識別のため
のタグをつけ、温度が高く、安定している窯の中央部に置きます。この窯木は1本一本寸法、
重さ、含水率を測定・記録し、炭焼き前後でデータを比較します。このデータから、炭焼き
後、積で50~60%、重さで25~30%に減少するという知見が得られました。
 
3)窯木本数、良炭本数、バイタ束数、藁、燃やした薪数、木酢液量などのカウント
 
 窯に入れた太さ別の窯木、藁、バイタの数をカウンターで数え、それを元に、準備しなけ
ればならない木、バイタ、薪などの本数、伐採するクヌギの本数、燃やす薪の本数などを
を決め、鹿の食害で悩んでいる昨今、無駄や不足がない様に心がけています。また、窯から
出した形の崩れていない良炭を数え、良炭率を算出しています。

4)記録シートへのデータの記入、プロセスのマニュアル化と情報の共有化


 温度、数の他にも、イベント(焚口遮蔽の時刻、開口幅、くどさし時刻など)、煙の状
態、木酢液の量など、炭の出来栄えにつながることを記録シートに記録していきます。

 プロの炭焼き師と違って、我々アマチュアが、一年にたった2回しかできない炭焼きの
中で、「菊炭」の出来栄え品質を上げていくには、この科学的アプローチしかなかったと思
っています。過去9年間、このやり方でデータを積み上げ、マニュアルにもとづく、「手を抜
かない炭焼き」、「今、窯の中で何が起こっているのか」、「いい菊炭を焼く決め手は何
か」を科学的に追求するクラブ員全員の姿勢により、97%という驚異的な良炭率を達成でき
たのだと思います。そして何よりの「原動力」は、いい「菊炭」が焼けたときのあの感動な
のです。
  
 さあ、炭焼きを体験したくなったでしょうか ・・・。




【 新会員募集中 】
 
ひとくら森のクラブでは新会員を募集しています。
森林ボランティアや炭焼きを楽しみたい方ならどなたでも結構です。
自然に親しみながら楽しく活動してみませんか。

11月からは菊炭の材料となるクヌギの伐採が始まります。
お手伝いいただけると大変助かります。

公園管理事務所(072-794-4970)まで
お問い合わせください。  
 



 









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