2019年6月7日金曜日

たった一頭の鹿がやがて土砂災害を引き起こす?


 金網で保護した「クヌギ(櫟、椚)」の新芽が順調に育っている。地元の多田中学校の生徒3人が、トライやるウィークで金網の設置を手伝ってくれた。そしてこの日は、公園の管理運営協議会が開かれた。学識経験者、公園利用者、活動団体代表、関係行政機関職員など12名で構成され、年2回程度、公園の管理運営、県民参画の方策、ボランティア活動支援などについて話し合う。

 「たった一頭の鹿が土砂災害を引き起こす?」 「風が吹いたら桶屋が儲かる」みたいな話が話題になった。今回の会議は、この公園でも深刻化している鹿の食害が話題の中心だったが、協議会の会長を引き受けてくださっている植生学、環境保全の専門家で、里山にたいへん詳しい兵庫県立大学名誉教授の「服部 保」氏の話である。




 一日3kgほど草や葉を食べるという鹿が多く繁殖すると、下草がなくなり、地面が露出、結果、土砂流出が起こりやすくなる。燃料革命などにより木材の需要が減り、里山保全の放棄により、かってないほど、木が高木化、大木化して倒木しやすくなっている。それに加えて、今後も益々頻繁化するであろう異常気象による集中豪雨。まちがいなく大規模な土砂災害は増えていくと予想される。まさに、「たった一頭の鹿が、やがて土砂災害を引き起こす」という話であった




 このことは、防災上大きな問題へ繋がり、その重大性は自治体も十分認識しているという。例えば神戸市。背後は、大部分が崩れやすい花崗岩でできている六甲山。

 かっては燃料や資材を得るため、森林の伐採が進み、明治初期には地表が露出するほどに荒廃した。当時の神戸港の写真の遠景には草木が全く生えていない六甲山が写っている。(写真参照)現在の緑豊かな六甲山からは想像もできない全山はげ山の姿であった。

 このような山地の荒廃により、たびたび土砂災害を招いたことから、1895年(明治28年)より兵庫県が砂防事業を開始した。そして1902年(明治35年)からは山地の緑化事業も開始した。これは、杉や檜のような商業材ではなく、広葉樹林を中心とした治水を目的とした当時としては画期的な緑化事業であった。規模ははるかに小さいが、鹿の食害による地表が露出が、土砂崩れに繋がったことは、昨年、西日本豪雨でわれわれも経験したところである。  

 こんな歴史と経験を持つ神戸市では、現在手を焼いている「イノシシ(猪)」に加え、大規模土砂災害に繋がりかねない六甲山への鹿の侵入、繁殖を危惧し、大変敏感になっていると聞く。

 このような防災上の観点から、積極的な伐採による低木管理、樹木の若返り化が望ましいが、手間、コストの問題もあり、なかなかすぐに取り組めない状況である。「焼け石に水」かもしれないが、我々、森林ボランティアの活動の意義もそこに見出せる。 

  いよいよ、雨の季節。
 




 鹿の食害のため、公園には草花を植えることはなかなかできない。唯一あちこちに植わっていて満開を迎えているのが、鹿の嫌う「ラベンダー」。そして、あれほどまでに駆除に手を焼いていた「セイダカアワダチソウ(背高泡立草)」は、鹿が好んで食するため、ほとんど見かけなくなった。




【 森のクラブイベントのお知らせ 】
 
 「木を使ったかわいい動物やクラフトづくり&竹パン」
 
   6月16日(日) 10:00~14:00 ワークショップ集合  (雨天実施)
   参加費:300円(保険代、材料費等)
   定員:20名(申し込み先着)
   お申し込みは公園管理事務所(072-794-4970)まで
 

【 会員募集中 】
 
ひとくら森のクラブでは新会員を募集しています。
森林ボランティアや炭焼きを楽しみたい方ならどなたでも結構です。
自然に親しみながら楽しく活動してみませんか。
活動体験も受付けていますので、公園管理事務所(072-794-4970)まで
お問い合わせください。
 


  

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