いよいよ待ちに待った炭焼きが始まった。第一回目は10名ほどの一般参加者を交えての炭焼きである。初日は、炭焼きの歴史や作業工程をすこし学んでもらい、窯前で二拝二拍手一拝、例年通りの窯開きの神事を終え、作業に取り掛かる。まずは、我々が昨年伐った窯木とバイタを集積所から軽トラに積み、窯の前まで運ぶ作業。そして窯入れである。手渡しで順々に窯の中に入れ、窯の中では窯木の細い方を下にしてぎっしりと詰め込んでいく。そして窯木の上部にはバイタも同じようにして詰め込んでいく。我々の窯の大きさだと、約400本近くの窯木と約80束のバイタが詰め込まれる。そして、窯木と薪とを遮断するトタンを設置すれば、窯入れ作業は完了。下の図は窯入れ後の窯の断面図である。このあと、古式に則り、火打石によって発火させた火を薪に点火し、冷え切っている窯を温めるための予備乾燥を行って、初日の作業を終える。
さて、二日目は、ただただひたすらに焚口で一日薪を燃やす日である。炭焼きというのは、窯木を直接焼くのではなく、窯口で薪を燃やすことによって、窯内の温度を数百度まで上げ、詰め込まれた窯木の熱分解を促進させ、炭化させる作業である。従って経験上、最低でも8時間は窯焚きを行わなくてはならない。このとき重要になるのが、薪の乾きの状態である。十分乾燥させた薪を使わないと、強い火力を得られず、窯の温度が上がらない。今回もそんな乾きが十分でない薪が混じっていたため、窯の温度が上がらず、ハラハラ、イライラした窯焚きであった。
やがて十分に温度が上がってくると、熱分解されたセルロース、リグニンなどのガスが窯内に充満し、窯口へと逆流し、火がつく。それが冒頭の写真のように、「蛇の舌」のように見えるのである。この現象が始まると、もう薪を燃やさなくても、窯内の温度が十分に上がっているため、空気を送ってやりさえすれば、熱分解を促進していく。空気穴を残して窯口をレンガで遮蔽する、その作業に取り掛かる合図が、「蛇の舌」なのである。この作業で二日目を終えるが、終える頃は、あたりは真っ暗で冷気が肌を刺す午後6時をとうに超えた時間である。乾きの十分でない薪を使ったことの反省や、済の出来栄えの心配、明日からの作業の思案などを頭に描きながら帰路に着く。
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