2021年3月20日土曜日

一庫公園と里山三種の心木

 

  

  すっくと聳え、開花が始まった「エドヒガン(江戸彼岸)」の巨木。私が住んでいる川西市の中心部にあり、4年ほど前に再開発によって誕生した公園、「キセラ川西せせらぎ公園」のシンボル・ツリーである。川西市出身のプラント・ハンター、「西畠清順」さんの発案で、日本一の里山とよばれる黒川地区の「エドヒガン」桜を移植したものである。

 川西市の市の花は、清和源氏の祖、「源満仲」の廟が多田神社にあることに由来する「リンドウ(竜胆)」。市の木は、市民の投票を受け「サクラ(桜)」に選ばれているが、それとは別に、川西市の自然として、もっとも重要な日本一の里山林を構成する種より選定した、「クヌギ(橡、椚)」、「エドヒガン」、「ナラガシワ(楢柏)」の3種が選ばれ、「生物多様性ふるさと川西戦略」における里山保全のシンボル、「里山三種の心木(しんぎ)」と命名されている。


 「エドヒガン」は、「ヤマザクラ(山桜)」や「カスミザクラ(霞桜)」と同様に自生するサクラの一種だが、市を流れる「猪名川」水系の上流域にのみ自生し、兵庫県のレッドリストに記載されるほど個体数が少なく、絶滅危惧種に指定されている。しかし、川西市内には多く分布しており、桜の名所となっていて、この時期市民の目を楽しませてくれる。一庫公園内にある2つの群落は2015年川西市の天然記念物指定を受けた。



 
 「クヌギ」は、この地域の里山林、台場クヌギ林の代表種であり、「クヌギ」の樹液には「オオクワガタ(大鍬形)」、「カブトムシ(甲虫、兜虫)」、「オオムラサキ(大紫)」などの昆虫が集まり、まさに生物多様性の世界を構成している樹であり、我々のボランティア・クラブの一番の目的である、菊炭を伝承する炭焼きの原材料でもある。活動拠点の「一庫公園」には、「台場クヌギ」の林があり、昔からこの地域の生業であった炭焼きを支えてきた里山林であった。今では小学生の里山体験教室の活きたテキストになっている。
  

  

 「ナラガシワ」。「風土記」などの古典に記されている「かしは」とは、現在の「ナラガシワ」に該当するという。その葉は奈良・平安時代等には特別な神事に供物を盛る器として用いられており、その「かしは」の葉を天皇の命を受けた美しい采女が、川西市畦野に取りに来たことが「住吉大社神代記」という古文書に記されている。
  
 また、「ナラガシワ」は絶滅危惧種の「ヒロオビミドリシジミ(広帯緑小灰蝶)」という大変美しい蝶の唯一の食草となっていることでも知られる。(写真はNETより拝借)
  
 分布の東限が川西市笹部となっている「ナラガシワ」は、地域の食文化とも深く関係している。猪名川上流域で作られている「ちまき(粽)」は、「ナラガシワ」と「ヨシ(葦、芦、蘆、葭)」の植物の葉で包まれているが、日本国中探しても「ナラガシワ」で包む「ちまき」は他にはないという。一庫公園でも活動団体のイベントとして毎年6月に、公園内に自生する「ナラガシワ」を採取し、市内黒川地域に伝わる「チマキ(粽)づくり」を一昨年まで行っていた。
  
 「里山三種の心木」。まさしく川西市の自然と地域の関わりを象徴する「木」であり、活動拠点の一庫公園を代表する木でもある。さらに川西市では、「三種の心木」に次ぐ重要な自然保全のシンボルとして、「ブナ(橅)」、「コジイ(小椎)」、「ユキヤナギ(雪柳)」、「シロバナウンゼンツツジ(白花雲仙躑躅)」、「エノキ(榎)」の5木を「川西五木」と命名している。
    

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