2022年3月3日木曜日

”銀爺い”の逝去を悼む

 

 

 「杉浦銀治」氏が1月8日にお亡くなりになったという知らせ。「杉浦銀治」と言っても一般の人には馴染みがない人でしょう。私も、会ったこともなく、まして、お話ししたこともありません。しかし、「炭焼き」を通じて、不思議な縁でつながっていたのです。

 10年前、「ひとくら森のクラブ」をたちあげて、一庫公園の主たる行事である「菊炭焼き」の技術の伝承を引き受けた。立ち上げる前に所属していたクラブでも、炭焼きを経験していたので、おおよそのノウハウは知っていた。しかし、引き受けた後の最初の炭焼きの出来栄えは、「菊炭」とは程遠く、到底満足できるものではなく、文化・技術の伝承という大きな目的を前に、頭を抱えたものでした。

 そんなときに、私の眼を見開かせてくれた一冊の本に出合いました。それが、岸本定吉、杉浦銀治、両氏の著書、「日曜炭焼き師入門」(総合科学出版2012年刊)。そこには、炭焼きの原理、炭窯の機能、炭になるまでの工程 ・・・などが丁寧に書かれていました。「これだ!」と思い、次回の炭焼きからはこの本を参考にして、ノウハウを積み上げていき、クラブ員の誰もが、何とか「菊炭」をそこそこ出来栄えで焼けるようなレベルに到達できました。この本には感謝しています。


 そして、ここ最近何年か毎年、85歳というご高齢ながら、電車とバス、さらに30分歩いて、我々の炭焼きの最後の工程、「窯出し」の時に出来栄えを見に来てくれる方がいます。Nさん。最初は私も知らなかったのですが、公園の職員で見知った方がいて、公園がオープンして、炭焼きを始めた20年ほど前、先輩たちが炭窯の建造から炭の焼き方までご指導を頂いた方だという。しかもそのNさんの炭焼きの師匠が「杉浦銀治」氏だったのです。不思議な因縁。「素晴らしい菊炭。私が教えることなどない。」と言いながらも、今年も見届けていただいたNさんから「杉浦銀治」氏の訃報を聞きました。

 思えば、「日曜炭焼き師入門」を通じ、Nさんを通じ、我々の炭焼きの師匠でもあったのです。森林総合研究所で製炭の研究や後輩の育成に情熱を注ぎ、その人柄は「銀爺い」と呼ばれ。平成25年には「吉川英治文化賞」を受賞したという。

 一面識もない我々だが、今年焼けた「菊炭」を捧げ、悼むことにしよう。

 合掌 ・・・・。







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