2016年10月20日木曜日

鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき


 私の所属するボランティア・グループは、公園で行う近隣の小学校3、4年生の自然体験学習をサポートしている。今日、そのカリキュラムの準備をするために、森へ入っていった時のことである。小学生がウォーク・ラリーを行う予定の散策路のすぐ近くで、その角をロープに絡め、取れなくなってもがいている一頭の牡鹿を見つけた。鹿は母系社会で、普通、牡(オス)と牝(メス)は別々の群れで生活するが、多分9月~11月の繁殖期を迎え、牡が牝鹿の生活圏に入り込んできて、災難にあったと思われる。われわれにとっては、鹿はクヌギの葉や芽を食べてしまう天敵ではあるが、放置すれば、間違いなく死んでしまうので、そのままにするわけにもいかず、ロープを切ると一目散に山の中へと消えていった。

『 奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき 』
                    猿丸太夫(5番) 『古今集』秋上・215




 静かである。ウォーク・ラリーをする小学生がやってくるまでは、森の中は本当に静かである。しかし、耳を澄ませると、時折、野鳥の囀り、虫の鳴き声が聞こえてくる。それに混じって、「コン」という音も。団栗(どんぐり)が落ちてきて、ウッドデッキに当たる音である。目を上げると、「ガマズミ(莢蒾)」の真っ赤な実が ・・・。そんな静けさを、ゆっくりと味わいたいと思ったのも束の間、地響きを立てて、小学生の一団がやってきた。
   

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